人気のない廊下にパタパタとスリッパの音がしたかと思うと、部室の扉が開いた。
「やっほー」と入ってきた人物に、
「珍しいね」と声をかけた。「今日はバレー部も生徒会もないんだ?」
彼は三つの部を掛け持ちする忙しい人物だ。当然一番暇なこの部室には、月一来るか来ないかと言ったところ。
「そうそう。バレーは設備点検で体育館使えないから休みになって、生徒会の方も今日俺しかいないからやめた。でもここもいつもより人いないね」
そう言って部室をキョロキョロと見渡す。ここにいるのは俺と彼を含めて三人。あと一人はいつものように椅子で昼寝をしている。
「二年は?」
「ゲームの発売日だから帰るって」
「なるほど」
「俺も課題したら帰ろうかと思ってたんだけど」
「そうなの?」
「せっかく三年男子揃ったし、フードコートでも行く?」
「いいね」
流れるように話が進む。学校の近くにあるフードコートは、うちの高校生の溜まり場になっているのだ。
「……ということになったけど」寝ている人物に聞こえるよう少し声を張り上げると、
「勝手に話を進めるな」と彼は薄目を開けた。
「起きてたんだ」
「やっほーがうるさいんだよ」
面倒くさそうに身体を起こすと、顔にかかった前髪を払う。人付き合いが苦手は彼は、友達同士で駄べるのが好きではなく、普段こういうのは断るタイプだ。しかし、
「嫌なら奢るよ」と言うと、冷めた目で、
「お前に借りをつくると面倒だからいい」と却下された。それから鞄を手に取って立ち上がった。
「準備万端だね」
「気が向いただけだ」
「じゃあ気が変わらないうちに……」
俺もすぐに机の上に広げていた課題をしまって、三人揃って学校を出た。
#放課後
10/12/2023, 11:00:52 PM