静かな夜明け
世界線はt72「世界線は気にしないでください」
真っ暗な真夜中の森を兄と一緒に駆け抜ける。
追っての兵は十人居る。兵は私目掛けて銃を乱発してくる。でも私の忌々しい体は改造されてるから弾を弾き返す。
「あと少しで森を抜けられる!頑張れ!」
兄はそう言って私の手をさらに強く握って森を走り抜けていく。それでも追っての兵達は構わず乱射してくる。とうとう兄の肩を掠める。
「ちっ···くそ、お前は目をつぶってろ」
私が止める前に兄は兵達に容赦なくマントの下に隠していた銃を撃つ。
バンッ
バンッ
バンッ
数人もの兵が息絶えると他の兵も撤退していく。
あぁどうしようまた私のせいで兄に人を殺させてしまった。
「目をつぶってろって言っただろ?お前はもう血を見なくてもいいって言ってるんだから、こう言うのは全部お兄ちゃんに任せろ」
そう言って私の頭を撫でながら抱きしめてくれる。
でも、私と一緒に居たら兄の命は常に危険にさらされる。兄さんだって本当は辛い筈なんだ。私のせいで兄さんがこれからも苦労するぐらいならいっそあの「兵に殺されてしまった方が、なんて考えは今すぐやめろ」
「······」
「お前は悪くない。あんな体にしたアイツが悪いんだ。」
「·····で··も··わたし····ひとを」
「でもそれはお前が好き好んでやった事じゃないだろ?だから悪くない。お前が罪悪感を感じることは無いんだ」
兄は再び私の手を掴んで森を歩いていく。
なんて温かいぬくもり。
こんなぬくもりを感じていい筈が無い。
罪人は死ぬべきだ。こんな人殺しの私なんて忘れて欲しかった。でも兄が私の為にひとを殺してまで助けてくれる事に嬉しいと思ってしまう自分を今すぐ殺してしまいたい。
でもそんな勇気私に無いからいつも通りに夜明けを迎える。兄と私だけの世界で見る夜明けはとても静かだった。
2/6/2025, 11:00:40 AM