冬巴

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親友が死んだ。
目の前で死んだ。
信号無視した小さい子供を庇って死んだ。
何故、俺ではなかったのか。
優しい心を持つあいつは何故死んでしまったのか。
俺1人、残してあいつは逝った。

「俺もっすぐにそっちに行くからっ…だからっ…少しだけ俺を待って」
「やだ…ね。お前は…来なくていい。」
喋らないで欲しかった。喋ったら死んでしまうような気がした。逝かないで欲しかった。
「俺は…多分先に逝くから…お前を待ってる。でも…長生きしろよ。次会うときは…来世だ。」
もう、駄目なのか。周りの焦る声も聞こえない。俺の心を表すような雨の音と、あいつの声だけが聞こえた。
「また…会おうな」
「…っあぁ、絶対にな」
俺がそう振り絞るとあいつは死んで行った。

まだ気持ちの整理はついていない。でも、
「また、会おう」
そう決めたから。

11/13/2022, 10:09:14 AM