宵街

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 早く早くと手を引かれて転ばないように早足で歩く。ウキウキしながらどれを食べようかと品定めする姿は、可愛らしいと思うには十分。

 気づけばその両手には焼きそばと唐揚げ。私もチュロスと焼きそばを買ったけれど君の食べっぷりを見てるとなかなか進まない。
 どれだけ楽しみにしてたのか、ほんとわかりやすいなんて思いつつ。

 今日のためにバッチリ浴衣を着込んで髪を結い上げて。声をかけられたらどうするんだろう。
 そんな私も君に言われて色違いの浴衣だし。男一人もいないから守ってなんてあげられないよ。

 できる限り守ってみせるけどさ。

 ほんと君は私の気持ちなんて知りやしないんだから。好きなだけ遊んで思い出になるだけなんだろうな。

「あ、花火!」

 その声につられて空を見る。瞬間、夏空に花が咲く。ああそうか、花火だって一瞬だ。それでも誰かの心を奪うことができるって知ってて咲くんだ。
 それなら肖ってみてもいいかもね。

 肩をたたいて振り向かせる。

あのね、私本当は、君の事が

 花火の明かりにに火照った顔もこの気持ちも全部隠してみたけれど、君には伝わってるのかな?

 真っ赤になった君の顔は、花火のせいか、それとも⸺


14.『お祭り』

7/28/2023, 11:10:40 AM