鏡の森 short stories

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#010 『神様のマイルール』

 意地悪な姉役に飽きたんで次は違う仕事がしたいと言ったら、神様に盛大にため息を吐かれた。
 いわく、最近はそういう要望がやたらと多いらしい。
「役割を変えるのはいいけどねぇ。じゃ、言ってごらんよ、要望を。なるべく細かく」
「えええ。それ考えるの、神様の仕事じゃん」
「変えてほしいんでしょお。んじゃせめて、どう変えたいのか言ってくれなきゃ。じゃないとこっちのカロリーが高すぎてさぁ。栄養補給しようとするでしょ、そしたら余分なものばっかり取り込んじゃって……」
「あぁ! それで最近、そんなにまんまる」
 神様が手に持ってたお菓子の箱が飛んできた。
「とにかく! 変わりたいなら最低限の方向性は示せって言いたいとこだけど、要望まとめんのもだるい時だってあるんだから」
 どこからか取り出したペンでこちらを指し、それからメモ帳をぺしぺし叩く。
「まぁ、いいや。迷いすぎたらまずは原点に戻れってね。ってことで、あんた次は薄幸の美少女役ね」
 脇ほど単なる舞台装置の方が楽なんだけどなぁ、なんてぼやきながら。
 突然スリムになった神様は、鼻歌を歌いながらペンを走らせていた。

《了》
お題/ルール
2023.04.25 こどー

4/24/2023, 11:16:33 PM