あの子とわたしがこの世に『二人ぼっち』の、他に誰も理解する者などいない、寂しい生き物なのだ、という幻想は本当に、わたしの独りよがりな、とても都合のいい夢でしかなかったのだ。
いずれこの矢印、いまのあの子とわたしを乗せている、運命とかそんな名前のそれは、その天辺から布を裂くように、奇麗に分かたれるはずで。
そして二人をそれぞれの方角へと運んだ矢印はその後、もう一切交わることはない──わたしにはそれが、痛いくらいにわかっていたのだった。
「姉さまと、おんなじ夢が見られたらいいのに」
いつか──お互いの吐息を感じながら、あの子が言ったこと。
一つの毛布を分け合って、お互いの身を一つにするかのように身を寄せ合って、毎晩同じ寝床で眠った二人なのに、思えば見る夢は、同じではなかった。
「そうしたら、ボクはずっと、イヴォン姉さまと一緒にいられるのにな」
「……お前の夢に、わたしは出てこないの?」
「うん。いっつもね、姉さまを探してるのに、どこにもいないの。だからほんとは眠りたくない、でも姉さまとこうしてるのは好き」
あの子にきゅう、と握られた手は温かくて、わたしはずっと、それを放すことを躊躇っていた。
この現実は──わたしが眠らずに見続けている、ただの夢で。
そしてわたしは、あの子の手を強く握りしめたまま、暗闇へと続く、わたしの運命の矢印にただ、あの子を巻き込んでいただけで、だから。
この、わたしにだけ甘やかな『夢から醒める前に』、わたしが狂わせてしまったあの子の運命の矢印を、正しい軌道へと戻してやる──それが、わたしがあの子にしてやれる、最後のことだった。
──そうして、わたしは。
本当はわたしの弟などではなく、さる貴族のご落胤であったあの子の存在を、信頼に足ると判断した、あの子の本当の家族に知らせて、深く眠ったままのあの子を、彼らに引き渡し。
わたし自身は遠くの地を治める別の貴族にもらわれていったのだ、という嘘の言づてを、これからあの子を慈しむと誓う彼らに頼み、あの子の前から姿を消した。
別方向へと走り出した運命の矢印に、それぞれの身を委ね、わたしとあの子はもう二度と会うことはない──。
そのはず、だったのに。
「もう……嫌、なんだ」
わたしの知らない低い声になった、あの子の声。
あの子に見つけられ、力が抜けてその場にへたり込んだわたしにすがるように、わたしの肩を抱くあの子の、ただただ懐かしいと感じてしまう温もり。
「ボクはいつも姉さまを探していて、なのに姉さまはどこにもいなくて、夢も現実も、どちらもボクを一人にする、そんな悪夢の日々に姉さまは、貴女はボクを、置き去りにしたんだってこと、それを……貴女はちゃんと理解しているの、イヴォン?」
理性とは裏腹に、期待に『胸が高鳴る』、それを抑えるのに必死なわたしは、なにも言葉を返せずにいて。
……だって! お前とわたしは絶対に、一緒には生きてはいけない、でもお前はここにいて、それが意味することは……。
「これからはずっと、一緒にいる。どうしても」
耳元で、そんな──まるで夢みたいな言葉を、お前が囁くから。
そのせいでわたしは、早くこの夢から醒めなくちゃ、って……お前の首の後ろにに回した手をこっそりと、何度も何度も、つねり続けてしまったのよ?
3/22/2026, 2:02:15 AM