弥梓

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『こぼれたアイスクリーム』

※BL

「冷たさが染み渡る……」
「オッサンくせえ」
「しょうがないだろ、実際おじさんなんだし。君だってあと二年もすれば僕と同じ立派な三十のおじさんになるだろ」
拗ねたように唇を少し突き出す仕草は、元々の童顔と相まってとてもじゃないが三十路の男には全く見えはしない。
「そんなことより、君も食べる?一口ならあげてもいいよ」
「いらねえ。年や見た目じゃなくて言い方がおっさんくせえって言ってんだよ」
「そう言う君だって、ビール飲んだ後にぷはーだて言うやつ、おじさんくさいじゃないか」
「うるせえ」
「自分でもそう思ってるって顔だ」
ふふんと鼻を鳴らして笑う顔が小憎たらしく、ついその鼻をつまんでしまった。
「いった……!って冷たい!!」
突然鼻を摘まれて、驚きに肩をすくめたせいで斜めになった溶けかけのいちごのアイスが、襟ぐりから露出するこいつの鎖骨にぽたりと落ちた。
あまり甘いものは好まないが、それが美味そうに見えて、思わずそこに舌を這わせてしまう。
「うわ!いきなり何するんだよ……!」
「一口くれるんだろ?」
「それは……言ったけど……こんなところで」

8/13/2025, 2:06:08 AM