ガルシア

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 子供だという自覚はある。すくすくと育った体は四十に近いというのに、心は十に満たない。笑顔が子供みたいで可愛いとか、子供のように自由な感性を失っておらず素晴らしいだとか言われたが、当たり前だ。本当に子供なのだから。
 しかし、子供だろうと生きていれば物事を覚えるもの。仕事を始め、情欲を知り、世界が広がった分欲するものは増えていく。大人であれば諦めがつくことも諦められず、駄々を捏ねて無理やり叶えたアンバランスな幸福が積み重なっていた。
 安心や平穏を求めて妻と結婚した。燃え上がるような性愛を満たしたくて愛人をつくった。愛人への愛はあったが、恋をしたのは妻だけというのは真実であり免罪符でもある。世間には通じない、夫婦の間だけでもしかしたら効果があるかもしれないという程度の頼りない免罪符だ。
 欲求を制御できない、子供という生き物はただ純粋に欲しいものに手を伸ばす。過ちを片付ける大人は存在せず、僕は今にも崩れそうな砂の城を抱き締めているような心地で今が続くことを願っていた。
 いつか、普通の大人になれる日は来るのだろうか。


『子供のままで』

5/12/2023, 1:50:13 PM