仮色

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【子供のように】


「ねぇ、ゆるして」

静寂の水面に、ぽつんと雫が落ちた。
何に希っているのか、何に祈っているのか、何に、何に。
苛ついてグシャグシャにした紙みたいに考え全部が混じり合って、分からない。

「ゆるして」
「ゆるして」
「ゆるさなくてもいいから、ゆるしてほしくて」

何を言っているのだろう。何に願っているのだろう。
そんな簡単なことさえも、立ち昇る水蒸気みたくすぐに消えて分からなくなってしまう。

真っ暗なキャンバスに浮いている真上の月がアンバランスなようで、どこまでもマッチしていて。
ゆるして、なんていたいけな言葉に感動したように、雲に身を隠した。

10/13/2024, 7:21:15 PM