ずい

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『愛を叫ぶ。』

友達と初めて寄ったレストラン。夜景が見える席で、今女性が男性にプロポーズされたらしい。

「やば、ドラマみたい」

プロポーズが成功した男性とその場で受けた女性に拍手が送られる。
ひそひそと噂する人、酔いの勢いで二人に話しかける人、それに便乗する人たち。ドラマや漫画のその後のレストランってこんな感じなんだと、淡々と目の前で続けられる一連を見ていた。

その帰り道。

「ああいうのってどんな感じなのかね」
「さっきの?」
「そう。好きだー!って愛を叫ぶの。ドラマとか映画とかでよくあるじゃん? うらやま半分どんな感じなのかなって」
「別れたばっかだしねえ、私ら」
「それな!」

わははと酔っ払い特有の大声で友達が笑う。
そう。今日は二人して最近彼氏と別れた慰め合いの会をしていたのだ。夜景が綺麗なフレンチレストランで。
奮発してみたらこれだ。

「叫ばれたいかは別としてさ。ああいう恋愛したいな。人生で一回くらいは」
「そうね。叫ぶ!じゃなくて叫ぶ。くらいで」
「なんだそれは~」
「適度がいいって話。愛もお酒も!」

駅を目指して友達と歩く。
隣を歩くこの強気な美人さんが、今日の彼女みたいに素敵な恋愛ができますように。

しばらくすると駅から洩れる明かりが私たちを出迎えてくれた。
これからを照らしてくれる一筋の光のように見えた。

5/11/2024, 2:31:10 PM