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あいまいな空


 まだ夕方なのか、はたまたもう夜なのか。イカスミに侵食されていくオレンジジュースみたいだ。ふと、窓枠から眺めた空の色に、そんな感想を抱いた。
 スマホのロック画面に目を落とす。返事はまだ来ていない。

 顔も声も性別も知らない、愛しい貴方だって、この空を見ているのだろう。
 今は見ていなくても、この空を見て思い耽る日がきっとあったのだろう。
 なんの根拠すらなくたって、貴方と同じ空を見ていると思い込むだけで、心が愛で充たされるんだ。

 四角い箱を胸に当てて、空を見上げる。タダの箱じゃない。貴方と会話出来る、唯一の命綱。
 そして、祈った。貴方が幸せであるように。上手くやれているように。私のことを好きでいてくれるように。この愛が、届きますように。

 気が付けば、空は深藍一色に染められていた。
 装飾のように散りばめられた山盛りの愛と、丸い満月だけを残して。

 貴方のための、愛舞な空。

6/15/2024, 5:27:52 AM