何気ないふり
椅子に座り本を読む貴方を見る。
貴方は物語の中に入り込んでいるのか、私の視線にも気付かない。
コポコポ。
サイフォンが音を立て、コーヒーの良い香りが部屋にただよいだしても、貴方は本から顔を上げない。
そんなに面白いのかな?
私は気になって、まだ熱い2つのマグカップを持って、貴方の目の前に座る。
「どうぞ、まだ熱いけど」
「うん。ありがとう」
ねぇ、今日はせっかくの休みなのに。外も、いい天気なのに。
―――私が、ここにいるのに。
コーヒーを飲みながら、じーっと貴方の表情を見る。
じーっと。
じーっと。
そのうち、貴方の耳が赤くなってくるのを見つけてしまった。
「ちょっと、そんなに見られたら照れる!」
なぁんだ、何気ないふりしながら私の事、気にしてたんだ。
「だって構ってくれないから」
わざとふくれて文句を言うと、貴方は分かったからと言って、本にしおりを挟んだ。
「コーヒー飲んだら、散歩行こうか」
貴方の提案に、私は笑顔で了承した。
了
3/30/2024, 10:33:46 AM