『寂しさ』
さびしさは鳴る――という書き出しから始まる小説があったっけ。
溢れるみずみずしさに、なんとも詩的で青いなと思ったものだった。
私にとって寂しさとは、もっと仄暗くてカサついている。
なにかを求めても得られず、誰かを求めても寄り添えず。諦観を飲み込んだ先に、それはある。
咳をしても一人、と言った放哉の句の方が近しい。
愛や憎しみが人を狂わせるのはよく知られているが、寂しさもまた人を壊す。
冷えて乾いた心の薄皮がパリパリと剥がれ落ちてゆく音を、聞いたことはないだろうか。
12/20/2024, 5:27:07 AM