設定済

Open App

夜の高速道路を走る。
道中はライトが定期的に配置されていて、リズムよく通り過ぎていく。
タン、タン、タンという揺れと同期して、隣でイビキをかきながら寝ている妻も闇に青く照らされながら揺れている。たまに追い越す車があるが、夜中の高速道路は静かだ。

カーオーディオで「美しき青きドナウ」を流す。まるで、亜光速の宇宙旅行、定期的に視界の中央から端へと吸い込まれていくライトが星の光、なんちゃって。

「あ、1km先にパーキングエリアだ。
 あたし、トイレへ行きたくなっちゃった」
いつの間にか目を覚ました妻が言う。
「じゃあ、寄るか」
と言って、脇道へ逸れた。

夜中のパーキングエリアの駐車場には私たちの車しか止まっていない。妻がお手洗いへ行っている間、私は自販機でコーヒーを買った。
お金を入れて、ブラックコーヒーのボタンを押す。
自販機から陽気なルンバが流れる間、見上げると遠い静寂の中で本物の星が泡のように浮かんでいた。

旅の途中で、白い息を吐きながら飲む温かいコーヒーは格別だ。

「見上げて何してるの?」
妻が戻ってきた。
「コーヒー飲んでた」
二人でコーヒーを飲み回しながら星を眺めた。お互い星が綺麗だと素直に言えるガラじゃないって分かってたが、お互い思っていることは同じ、星が綺麗だ、ということが無言のうちに共有されていたはずだった。だけどわたしは静寂に誘われて思わず、
「星が綺麗だなって」
「何よ、告白?」
「そんなわけ!なんで今更!」
お互い笑いながら恥ずかしくなって、だけど満たされた気分で車に戻った。

1/31/2025, 3:33:40 PM