日暮れない土曜の夏の夕刻。休日前のひととき。
噴水広場には、路上パフォーマーがギターを片手に、恋の勝利の歌を奏でていた。
その旋律は短調でどこか哀しい。
「あの人から勝ち取った恋人よ、どこにも行かないで。私が消えゆくまで」と切ない願いを歌う。
広場の人々はこの緩やかな時間を楽しむ。
近くの木々に宿る鳥たちや、どこかの猫もその歌に耳を傾けている。
歌声は静かに噴水の水に溶け込み、この世の全てがどこにも行かずに一つに繋がっているかのようだった。
「どこにも行かないで」
6/22/2025, 11:49:20 PM