『永遠の花束』
家に帰ると、リビングのテーブルの上に花束が置かれていた。白い薔薇が何本も包まれた、豪華なブーケ。
薄紫色の包装紙は綺麗なリボンで結ばれており、そこにFour You と書かれたカードが挟まっていた。
私は腰を屈めて、薔薇の花をまじまじと見る。
クリーム色の花弁は滑らかで、シルクで作られているようだった。
私は思わず見惚れ、薔薇の花に少し触れる。
薄い硝子を触るときのように優しく、そっと触った。
すべすべとした柔らかな花弁が指先を撫でる。
そのまましばらく見入って、ふと、彼女がくれたのだろうか、と思った。
彼女とは一年前から同棲しており、花束をくれるとすれば彼女しかいない。
でも今まで彼女には、花束どころかプレゼントも貰ったことがなかったので、少し意外だ。
もちろん今日は私の誕生日でもないし、バレンタインにはまだ早い。
だったらどうして彼女は花束を贈ってくれたのだろうか。
私は不思議に思って首を傾げる。
でもそれを考える暇もなく、突然私のスマホが鳴った。
画面には「葵さん」と表示されている。
葵とは、彼女の名前だ。
私は通話ボタンをタップして、電話に出た。
「もしもし、どうしたんですか?」
『……リビングに花束あるでしょ?それ、あげる』
「ありがとうございます。でも、何で急に?」
少し間が空いた。
『……帰ったら言う』
「……そうですか、分かりました」
『それだけだから、じゃあ』
「はーい」
通話終了ボタンを押す。
緩む頬を抑えきれずに、少しだけ笑みを浮かべた。
心臓がさっきから痛いほど高鳴っている。
これは、もしかして。
プロポーズ……なのでは。
私は嬉しさのあまり、胸の前で携帯をぎゅっと握りしめた。
後から分かったのだが、白い薔薇の花言葉は「私はあなたにふさわしい」だそうだ。
少し上から目線なのが、高飛車な彼女らしいな、と少し笑ってしまった。
2/4/2025, 11:38:00 AM