ある病室の午前0時すぎ
♪……ピーロッポッポピーロロピロリロ…
調子の外れた横笛の音と共に、10年前に亡くなった奥さんを先頭に、権三さんと親しかった人たちが、かぐや姫のお迎えのごとく、にこにこ、光に包まれながら、雲に乗ってやってきた。
『迎えにきたよ〜。』
しんみりしたのは嫌い。とずっと言っていた権三さん。
「ああ、みんな…
きてくれたのか。」
『そうだぜ。どうだい、派手だろ?』
「ああ、うれしいよ…。」
『この部屋は、お前とあのじいさんの2人きりかい?なんならあいつも連れて行くかい?』
「はっはっは。
あいつは定吉。ここにいる間仲良くしてもらってたんだ。
まあ、憎まれっ子世に憚るだから、あいつは長生きするよ。」
『そうか。そうか。
じょーだんだ。
さあ、いこう。』
♪ピーロッポッポピーロロピロリロ………
「………………
うるさあぁぁぁぁぁい!!!」
権三達が去った後に定吉は飛び起きた。
彼は実は最初の笛の音から起きていた。
うるさかったし、明るかったからだ。
「なんでい。こんちくしょう……。」
定吉の洟を啜る音が部屋に響いた。
その3日後の深夜、定吉だけになったあの病室から、また、笛の音が聞こえてきた。
「病室」
8/3/2024, 12:28:16 AM