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君の奏でる音楽は、
いつも柔らかくて、優しくて、悲しい。

<君の奏でる音楽 >


本人は全然そんなつもりなさそうだったけど。
君はいつも、何かを抱えていた。ずっと悩んでいた。



中学校の時。
なんでみんなみたいに上達しないのかって。
本当にコンクールに出るのかって。

みんなと一緒に出ていいのかって。

だから支部大会で、
金賞を取れた時は泣いていたよね。

「自分も出てよかったんだ。
 ちゃんと上手くなってたんだ。
 みんなの足を引っ張って無かったんだ。」
って。


高校生の時。
吹奏楽部に入ってよかったのかなって。
本当に私が最初のソロを吹いていいのかって。

こんな気持ちで出ていいのかなって。

だから県大会で、
銀賞を取った時は嬉しくも、もやもやしていたよね。

「自分のソロの批評を沢山して貰えた機会だった。
 もっと頑張れたはずだった。

 本当に吹奏楽部に入るべきだったのか。」
って。


結局君は部活を辞めたけど。
別にそれは悪いことだったとは思わないよ。
むしろ凄くいい決断だったんじゃないかな、なんて。
君はそれに後悔していないし、むしろ満足している
だろうし、ね。


君は今でもたまに、楽器を吹くけれど。
君はその度に楽しそうで、嬉しそうで、
悲しそうだけど。
君は今でも、何かを抱えているし、悩んでいるけど。

ひとつの決断をして、ひとつの大きな経験を経て、
君はつよくなっているから。



君の奏でる音楽は、
柔らかくて、優しくて、ほんのちょっぴり、悲しい。

8/12/2023, 12:45:36 PM