「手紙」のアナログを、昨今、あまり見かけなくなった物書きです。
ネット情報によっても、よらずとも、郵便事業の売り上げはそこそこ減少傾向。
郵便の配達総数も、事実として減ったそうです。
で、その「秘密の手紙」がお題とのことで、今回はこんなおはなしをご紹介。
最近最近のおはなしです。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、
まさかの地球の年末とガッツリ合致する頃合いから運行を開始する、多世界巡行列車がありました。
それは地球でいう3日程度の時間をかけて、
いろんな世界を巡り、別にどこかの世界に停車するでもなく、その世界を眺めながらその世界にまつわる料理を食べて、飲み物を飲んで、
そして、出発地点に戻って来るのでした。
この列車のチケットが某〓トリもビックリの御値段異常プライスでして。
チケット購入成功者には、お題そのもの、「秘密の手紙」のカタチでもって発送されるのでした。
さて。
「今年のグルメ列車は、ひとあじ違うぞぉ」
秘密の手紙を列車の運行会社から貰って、ひときわ幸福そうな顔をしておるお嬢さんがおりました。
「1枚のチケットで、6人と2匹乗れるところを、
今年はぁー、2枚!にまぁ〜い!!」
お嬢さんは、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織の局員。ドワーフホトといいました。
不思議の手紙が同封された封筒には、
手紙と一緒に美しい、魔法白金のチケットが2枚。
チケットの裏には緻密で美麗な魔法陣が、丁寧に手掘りで刻印されておりました。
「スフィちゃんを、やっと人間枠で誘えるぅ!」
ドワーフホトの仕事を手伝う、ドワーフホトそっくりの魂人形その1が、嬉しそうに叫びました。
「本体1人と、あたしたち魂人形5人で、人間枠いっつも埋まっちゃってたもんねー」
「これで、スフィちゃんを、ペット枠に押し込まなくても大丈夫だよぉ」
わいわい、やいやい。
魂人形もドワーフホトも、ぴょんぴょん小さく飛び上がって、輪になって、喜びます。
「本体1人とー、あたしたち5人とー、今年から魂人形のデジタル版も1人仲間入りしてー……
それから、スフィちゃんでしょー?」
「あと5人と2匹誘えるよ、どーしよぅ」
「5人?」「5人かなぁ」「5人じゃなぁい?」
「6号おねがい計算してぇー」
わいわい、やいやい。
なにはともあれ、秘密の手紙です。
御値段異常で手紙自体にも価値がある、多世界巡行列車の乗車許可告知です。
「乗車日まで、大事に保管しなきゃねー」
魔法白金のチケットを収納するに相応しい、水晶と金細工の鍵付きレターケースに、
ドワーフホトはお手伝いの人形たちと微笑み合いながら、秘密の手紙を入れて、鍵をかけました。
秘密の手紙はしっかり鍵の為された箱の中に、
頑丈に、それはそれはカンペキに、頑固に、
収容されたのでした。
収容、されてしまったのでした(フラグかな?)
「鍵、無くさないでねー」
魂人形その1が、ドワーフホトに言いました。
「大丈夫だよぉ」
ドワーフホトが、魂人形その1に笑いました。
秘密の手紙のお題から始まるおはなしは、こうして、一旦終わるのでした。
12/5/2025, 9:56:31 AM