もんぷ

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春恋

 春はみんな浮かれてるから恋しがち。気持ちが浮ついているから、今までに会ったことのない人の新鮮さとときめきを履き違えているだけなのだ。普通は桜が散る頃にそんな勘違いに気づくものだが、どうにも覚めない人がいた。一目惚れだと気持ちを伝えてくれたのは嬉しいが、自分にそんな出来事が起こるなんてどうしても信じられない。何かの罰ゲームか、ひどい勘違いか、何か自分の資産とか個人情報とかが狙われているのか。ひどい想像ばかりで頭が混乱しそうだが、兎に角本気でそんなことが起こるはずがないのだ。客観的に見てもイケメンとは言えない自分の容姿は生まれてから何十年鏡と向き合ってきたから分かる。命を救うだとか何かこの子のピンチを助けたとかならそれもわかる。ただそれもないのだ。新学期、自分がただぼやっと廊下を歩いていたら新入生らしき女の子に一目惚れだから付き合ってほしいと言われた。そんなわけあるわけない。何がどうしてそんなことを口走っているのか本当にわからない。そして今日もその子に付き纏われている。
「先生、前の件考えてくれました?」
「無理だって。どう考えてもおかしいし、そんなのありえないから。」
「えー!じゃあ卒業したら考えてくれます?」
「卒業って…入学したばっかりでしょ。いくら女子校で男子がいないからっておかしいから。」
「えーーーー」

4/16/2025, 6:51:04 AM