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「……あれ、これ」
 母が生前使っていた机の、下から二番目の引き出しから、一冊の日記帳を見つけた。それは筆まめな母が毎晩のように書き付けていたものだった。
 幼い頃から、お喋りなくせに大事なことはあまり言わない母がいったい何を思っているのか気になって、中身を見せて欲しいと何度も強請っていたが、一度たりともその願いが叶ったことはない。ある時期を過ぎた頃から強請らなくなったが、それは単に、母も一人の人間だということを認識するようになったからであって、興味が失せたわけではない。それは今も続いている。
 ……何が言いたいかと言えば、読みたいのだ。
 気を遣るべき母はすでに亡き人となってしまった。父は一定の距離を取ることで他者と信頼関係を築く人で、さらに母の尻に敷かれていたので、彼女のもっともプライベートな部分──ここで言えば日記の中身──には無遠慮に触れようとしない。この日記帳の存在を知らない可能性すらあるような始末なので、きっと目撃されても何も言いはしないだろう。


 ──例えば、家族の大切なものをひとつ自由に見られるとしたら、君はどれを選ぶ?


▶︎閉ざされた日記 #17

1/18/2026, 12:40:45 PM