空が泣く度に憂鬱な気持ちになる。
気圧だとか景色の影響だとかそんなものよりもっと簡単なワケで、昔の嫌な記憶が蘇るからだ。
もう十年も前の記憶になる。
恋人から突きつけられた別れを、食い止めただけのことが始まりだった。何分初めての恋人だったもので、当時は愚かなまでに若かったもので、最初で最後の強烈な愛だったもので、それはそれは必死に泣いて乞いたものだ。
そんな自分に恋人は心底呆れ果てただろう。渋々承諾しては無かったことにした。
濡れた土の匂いと雨音、唇の感触と冷えきった体温を今でも憶えている。
その半年後に、恋人は蒸発した。
悲嘆に暮れるなかで呟いた何故の一言が、虚ろの始まりだったと今になって思う。
空が泣く度に思い出す。
自分が処刑宣告をされた罪人だと知った絶望を。自問自答の先で見つけた真理を。
とはいえ生活は続けなければならない。顔色ひとつ変えることなく惰性に寿命を削っていかなければ。
ぼんやりとした憂鬱に浸りながら考える。
全て忘れていたいから、せめて死ぬ時くらいは空も泣かないでくれと。
9/17/2024, 6:34:01 AM