夏
お前と飲む、バイト終わりの一杯が好きだ。
バイト先の近くの、ちょっと広い公園の中にある、
紙コップのジュースの自販機。
そこで、炭酸のジュースを一杯ずつ買って、その場で一気に飲むのが。
俺と彼の、夏の習慣だったりする。
ぷはぁ、とジュースの半分以上を一気に飲み干した、お前が。
「今日はマジで忙しかったよな」
「あぁ、休憩もまともに取れなかったし」
「それにさ、新しく入ったヤツは全然仕事、覚えねぇーから、時間ばっか過ぎるっつうか」
「それな。先輩は教える気ねぇーから、俺らばっか面倒見なきゃなんないの、マジでキツい」
なんて。
バイト中の愚痴を、二人で言い合うのがストレス発散になっているし。
ちょっとした楽しみだったりもするから。
正直、バイト先には不満しかないけど。
お前と知り合えたことだけには、感謝している。
そんな俺の気持ちが伝わったみたいに。
ジュースを飲み干した彼が。
「俺さ、お前がいるから、今のバイト続けられてんだと思う」
帰りにこうやって、お前と一杯やんのは楽しいしさ、と。
空になった紙コップを、ゴミ箱に入れながら、彼がぽつりと言うから。
……さては、コイツ照れてるな。
なんて、俺の方を見ない彼に苦笑していれば。
「何笑ってんだよ、お前」
「ははっ……いや、一杯やる、ってなんか、酒飲んでるみたいじゃね、とか思ってさ」
俺も彼も未成年で。
お酒はまだ飲んだことが無いけれど。
「あぁ、確かに。サラリーマンが仕事終わりに居酒屋行くとか、こんな感じの気分なのかもな」
……だとしたら、大人になっても、お前と仕事の愚痴を言いながら、冷えたお酒を飲んだりしてぇーな。
なんて、俺はふと考えて。
そんな、お前との未来をぼんやりと思い描く、夏のある日だった。
End
6/29/2024, 3:13:15 AM