恋人たちが明るい夜の砂浜に歩みを進めると、ぬるい風が肌に当たる。うっすらと汗ばむくらいの気温。それでもふたりは、繋いだ手を離すことはなかった。
空を見上げると、大きな満月と星が広がる。
きらきらと輝く星々と、風に煽られて奏でる海の音楽は、この世界にふたりだけしか存在しないような錯覚に陥るほどだった。
彼女は恋人の青年を見つめる。
月の光に照らされた青年の顔は、普段見られないほど凛々しくて、いつも以上に心がときめいた。
青年が彼女の視線に気がついたのか、太陽のような目映い笑顔で彼女を見つめる。
「どうしたの?」
「……大好きだなって」
青年は頬を赤らめる。
月が満ちると、隠せるものが無くなるほど夜は明るい。彼女は照れた青年の姿を見られたことが嬉しくて、月に感謝した。
「えっと。へへ、俺も大好きだよ」
繋いでいた手が少し緩くなる。すると青年が指を一本一本絡めて恋人繋ぎをしてくれた。
それは、彼女に〝愛しさ〟を伝えてくれるよう。
だから彼女も、同じ気持ちが届くように祈りながら、指に力を込めた。
おわり
お題:夜の海
8/15/2024, 1:46:25 PM