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【雨に佇む】
(個人的に好きな話が出来たので、少々長いですが是非お読みください笑)

今はテスト期間中なので部活は休みだが、
県の選抜大会で大将を務める予定の絢音は、
武道場でひとり、竹刀を振り続けていた。

この大会で優勝すれば、全国への切符が手に入る。
ここで手を抜いてどーすんや。
鏡に映る自分と見つめ合いながら
ただひたすらに振り続けた。

気づけば、時計は午後8時を指していた。
手にはいくつもマメが出来て、血が滲んでいた。
流石に帰らなあかん…
一礼し、急いで竹刀を片付けていると
急に雨が降り出した。

うわ傘持ってないねんけど。
しゃーない走るか。どうせ既に汗でビタビタやし。
そう思って絢音が一歩を踏み出そうとした瞬間、

「傘、入るか?どうせ忘れたんやろ。アホやな。」
後ろから優斗が声をかけて来た。
彼はいつものように図書館で勉強していたらしい。
反射的に「うちアホちゃうんやけど!!」
と怒鳴る。
「まぁまぁそう怒るな。
せっかく優しさで言ってあげとんやぞー?」
優斗はそう言いながら傘を絢音の方に傾けて来た。
そして、ゆっくりと歩き出す。

「…アリガト」

くそ、何でコイツは自然に相合傘できるんや。
恥ずかしくないんか!?
コイツ勉強しすぎてついに脳がバグってしまったんか?
それとも恥ずかしいのはうちだけなんか?
うちがアンタのこと好きなん知ってて
わざと揶揄って来てるんかぁー!?
この秀才やろうめ!!

あーあ、こんな事になるなら
シーブリーズでもぶっかけときゃよかった。
絶対汗臭いって思っとるやん。
髪もベタベタやし。くし忘れたし。

絢音の心中など全く知らずに
優斗は呑気に歩き続ける。

「今度でかい大会でるんやろー?
俺応援しとるけんな。今日も自主練しとったやろ。そーいう絢音の真面目なとこめちゃ好きやで?
やっぱ絢音は剣道しとる姿がいちばんかっこええ。」

くそ、もーなんやねん。
なんでコイツはこうサラサラと
こっ恥ずかしいこと言えるわけ??
てか、かっこええよりかわいいって言えよ…
え、今の自分流石にキモイか。
あーもうほんとコイツとおると調子狂う!!

「あんたに応援されんでも頑張るわ!!!」
絢音はこう言うのが精一杯だった。









8/27/2024, 4:36:04 PM