『代わりと、かけがえ』
コインは落ちれば音がする
手にすれば価値がある
失くしても、また稼げばいい
誰かの代わりに、また誰かが来る
名前は消せる
居場所は変えられる
物は壊れて、買い直せる
言葉も着替えのように取り替えられる
でも──
初めて泣きながら笑った夜
呼吸の音さえ聞き逃したくなかった瞬間
差し出された、たった一度きりの「ありがとう」
それは、代わりがない
似た言葉では埋まらない
似た誰かでは誤魔化せない
かけがえのないものは
握りしめれば壊れ
離せば遠ざかる
だから怖くて
だから愛しい
金では買えない
けれど金でしか守れないこともある
代わりのあるものが支えてくれる
代わりのないものを、大切にするために
僕はその狭間で
今日も生きている
6/4/2025, 8:07:32 AM