Open App

 中古ショップを覗いていた時のことだ。
 ふと、一つのゲームソフトが目に留まった。
 昔、何人かの友人が楽しんでいたシリーズだったと思い、当時は小遣いが届かなかったことも思い出せば、今となっては大したことの無い値札を付けたままレジへ向かった。
 家に帰り、押入れ奥から引っ張り出したゲーム機本体は、多少埃を被っていたが問題なく起動する。
 最初は多少のキャラメイクがあっただろうか、相棒はどのキャラにしようか、年甲斐なくわくわくしながらオープニングを見遣ると、『続きから』の文字が目に入った。
 どうやら前の持ち主は初期化せずに売りに出したらしい。『はじめから』にカーソルを移動させ、いやいや待てよと思う。どうせなら、前の人の冒険を少し覗いてみたい、と興味が湧いたのだ。

『久しぶり』
『待っていたよ』
『どうしたんだい、そんな顔をして』

「……ああ、そういうことか」

見覚えの有るキャラクター、の多分しないだろう顔。
郷愁を誘うドットの景色、が奥で崩れている。
きっと考えてつけた筈の名前、が途中で文字化けし。
多種多様な道具、はどれもカウントストップ。

登場しない筈のキャラクターと共に一通り巡って、電源を落とす。

チートに歪まされた世界は恐ろしく物悲しい。
瞬きほどの沈黙を黙祷の代わりに、
今度こそ新しい世界の構築を選択した。

<0からの>

2/22/2024, 11:32:31 AM