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「上手くいかなくたっていい」

一人だけ跳べなかった。一段ずつ積み上がる跳び箱。ほとんどの子は6段、よく跳べる子は8段。その中で4段が限界だった。

みんなはやさしいから慰めてくれたけど、本当は馬鹿にしてるってわかってた。とろくて勉強できないのに体育もだめで、劣等感ばかりが積み重なる。

逆上がりもそうだった。私以外、全員ができるようになった。跳び箱は体育の時じゃないとできないけど、鉄棒ならいつでもできる。朝早く、一番に来る教頭先生よりも早く学校に行きランドセルを鉄棒の近くに置いたまま練習する。

教頭先生が来た。

「毎日よく頑張るね。上手くいかなくたっていい。そうやって努力することが大事」そう言って頭をなでてくれた。とうとうできたとき、教頭先生がわざわざ出てきてくれた。

「おめでとう」

教頭先生、私は今も頑張ってます。社会人になって後輩ができました。教頭先生のように「上手くいかなくたっていい」とは、なかなか言えません。ついイライラして「なんでこんなこともできないの!」って言ってしまうんです。

「努力することが大事なんだよ」

そうですよね。努力するから最初は結果が出せなくても、いつかは努力が実るわけで、そういう人には「上手くいかなくたっていい」と言ってあげたい。

努力って、いつから美点ではなくなったんでしょう。最初から努力しない人に「上手くいかなくたっていい」とは言えません。それは先輩である私の努力が足りないからなのでしょうか?

8/9/2024, 12:10:02 PM