るあん

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「大丈夫?目を覚ましてよかった」
「あの……誰…ですか……」

一瞬悲しそうな顔をしたベットの横に座っている女性

「急に倒れて病院に運ばれたんだよ。覚えてない?」
「すみません。覚えてないです」

何も覚えてないんだ。自分が誰なのか。その女性は誰なのか。何も分からない…けど、なんだろう。この喪失感は……忘れちゃいけない何かを忘れているような……

女性は色んな話をしてくれた。面白かった映画の話や綺麗な景色がある場所など。話してるうちに女性のことを気になるようになってきた。

そんなある日、女性は彼氏がいるんだと教えてくれた。とても悲しそうな顔をしながら教えてくれた。

この時この人の隣に立つことが出来ないとわかった。

「彼氏がいるなら、ここにいるべきじゃない。彼氏のところに行きなよ」
「会えないんだ。会っても会ってる感じがしないんだ。他人みたいな感じって言えばいいのかな」

思い出して欲しいなって呟きながら悲しそうな顔をした。自分ならそんなこと顔させないのにな……

「ねぇ。本当に何も覚えてないの?……思い出してよ。あなたは私の彼氏なんだよ…」

泣きながら言われた。その時だった。全て思い出した。あぁ。こんな顔させてたのは自分だったのか……こんな俺を好きのままでいてくれたのか

「全部思い出した。ごめんな。こんな俺を好きになったばかりに辛い思いさせて。好きのままでいてくれてありがとう」

決めたんだ。絶対に忘れてはいけない。こんな女性を忘れるなんてことは今後あってはならないんだと。
病院で感じた喪失感は、このとこだったんだ。

9/10/2022, 10:28:58 AM