「うちに来ない?」
犬や猫に問い掛けるような声にゆるりと視線だけあげた。小さな女の子だった。空色のコートに、整えられた長い髪がとても綺麗な。まぁるい聡明そうな瞳が、じいと場違いに俺を見詰めていた。
「…おれ?」
「うん。今ちょうどお手伝いさんを探してたの」
「…て、つだい」
「うん。ずーっと私と一緒にいてくれる私のお手伝いさんよ」
傷ひとつない白い手が伸びてそろりと撫でた。地面に丸く這いつくばって息をするだけの生き物を、優しく柔らかく。
「決めたの、私はあなたがいい」
だって、運命だって思ったのよ。
今でもお嬢様はあのときを思い出しては俺にそう笑うのだ。
9/24/2025, 12:05:40 PM