川柳えむ

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 その日はとても晴れていた。
 温かい春の日で、桜は元気良く花を咲かせていた。
 私はその日電車に乗っていた。
 ぼーっと窓の外を眺めながら、視線の先に広がる桜の木々に、春だなぁ……と改めて感じていた。
 電車はトンネルに入った。長い長いトンネルだ。
 窓の外は暗闇で、だからといって特に視線を変えることもなく、ただただぼーっとしていた。
 そして、トンネルを抜けた。その瞬間。
 桜の花びらが視界を覆った。
 まるでカーテンのように、桜の花びらが辺り一面を舞っている。
 驚いている間に、電車は次の駅に到着した。ここでしばらく停車するらしい。本来この駅で長く停車することはないので、何か調整があったんだと思う。
 ホームには止むことなく花びらが降り注いでいて、あまりにも幻想的な光景に、しばし見惚れてしまう。
 カメラを向けてみても、この光景は上手く写らない。私は心にこの光景を焼き付けた。
 あの日ほどの光景には、それ以来出会っていない。もしかしたら夢だったのではないかと疑うくらいの、美しい春の日だった。


『春爛漫』

4/10/2024, 10:42:14 PM