川柳えむ

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 真っ直ぐ見つめてくるその刺すような鋭い眼差しが、私の心ごと射止めてきて、とても苦しい。
 それでもこっちを見てほしい。その危険な香りとどこか悲しさを纏った瞳で、私のことを見ていてほしい。
 近付いてはいけないのはわかっていた。
 あなたのその瞳が怯えたようにこちらを見ていた。ずっと見ていたくて近付き過ぎた。そして私は殺された。
 あの一瞬、安心した表情を浮かべた。それがもしあなたの本心だったのなら、それでもいい。私がいない世界でなら笑うことができるなら、その世界で幸せになってほしい。
 死んでも忘れない。
 研ぎ澄まされた細い刃のような、とても痛々しい、全てを貫こうと見つめてきた。私の心を捉えて離さないあの眼差し。


『鋭い眼差し』

10/15/2023, 6:03:04 PM