川瀬りん

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『時を告げる』
(※多少ホラー話注意)


広島に生まれ育った者であるからか、8月6日午前8時15分の鐘の音には敏感だ。
広島の小中学生の平和学習は、語り継がれる原爆の体験談と知識が叩き込まれる。
生まれ育ったこの地で起こったあの出来事を体験してないのに、毎年行われる平和記念式典の鐘の音を聞くと時がまた経過したのだと感じさせる。

話は少しそれるが、原爆ドーム付近には沢山の霊がいるといわれている。
霊感がある者が近付くと気分が悪くなるとの噂も聞くし、近くの学校に通う霊感が強い生徒が視えすぎて学校に行けなくなったという話も聞いた。学校に出るらしい。
私自身も視たわけではないが、原爆ドームにデジカメを向けたところ「動くものがあると表示されるマーク」が画面に出たことがある。肉眼では何も動くものが映っていないのに。

昭和20年8月6日、当時は被爆した人々が水を求めて川へ向かったと聞く。原爆ドーム付近にも川がある。
多くの人が川で亡くなった。

毎年平和記念式典で黙祷を捧げ、平和を祈り、沢山の献花がされるが未だに彷徨っている霊魂があるのだろうか。
彼らはこれから何年経ってもそこに無念の思いを残し続けるのだろうか。

今年はもう過ぎ去ったけど、来年も再来年もまたその次の年も
8月6日には鐘が時を告げるだろう。
彼らの悔しさが癒えるかもわからぬまま何度でも――。




ノンフィクション 2023/09/07

9/6/2023, 4:47:27 PM