ぽん、と軽い音を立てて、スマートフォンの画面に通知が表示された。
大橋から、メッセージの通知だ。
昼下がり、ベッドから家の前に咲き乱れる桜を見ながら、微睡んでいたというのに。
『紗季ちゃんとリク付き合うことになったらしい!』
ぎゅんと心臓が跳ねた。
紗季は同じ学部で1番仲の良い女子だ。
ドッドッと心臓の音がうるさくなり、血行が良くなっていくのが分かる。
リクは高校からの親友…だと俺は思っているけれど、紗季が好きだなんて一度も言ってなかったはずだ。言っていたら聞き逃すはずなどない。
もう一度画面を確認すると、目に入った文字。
4月1日土曜日。
なんだ、そういうことか。日付を見た瞬間、そっと心臓の音は遠ざかっていく。
エイプリルフールの意味は4月ばか。もっとマシな嘘つけよ、ばか大橋。
ここで紗季に確認を取って、スクリーンショットを撮って送ったら、大橋はがっかりするだろうな。
口をひしゃげて、バレるのが早いと嘆く大橋の顔を想像すると笑えた。
『リクと付き合うことになったって、まじ?』
紗季にメッセージを送る口実ができたことについては、大橋に感謝だ。
なんだか拍子抜けして、また眠くなってきた。
俺は昨日買った550mlのペットボトルの残りの水を飲み干してから再び目を瞑った。
陽が傾いた頃に目を覚まし、まずスマホに手を伸ばす。
通知が3件。
まず紗季とのトークを開いた。
『誰に聞いた?笑 情報早い!』
寝ぼけ頭でその言葉を整理する。
やっと導き出された答えは、大橋のメッセージは嘘じゃない、ということ。
それが分かった瞬間、バッと布団を弾くように上半身を上げた。
そしてもう一度画面に視線を戻し、操作する。
『ショックで言葉でない??』
大橋からのメッセージ。
さっきとは打って変わって、血の気が引いていくのが分かる。
今年の4月いちばんのばかは、きっと俺だろうな。
13.エイプリルフール
4/1/2023, 12:56:44 PM