小絲さなこ

Open App


「あの家には帰らない」


カレンダーをめくる。
残りの枚数を数えて、ため息をつく。
来年のカレンダーを買うかどうしようか、迷う。


備え付けのベッドも机も狭すぎて、会社の寮は本当に、ただ寝るだけの部屋。
私物はキャリーケースひとつ。
クローゼットの中にある服は、ダンボール二箱分くらいか。
いつだって、どこにだって行ける。
あの最悪な実家以外なら。



絶対に、絶対に、あの家には帰らない。
生きるために、家を出たのだ。
来年の今頃、何をしているのかわからなくてもいい。
その日暮らしのような日々でも、あの家にいるよりはマシだ。

寮に住めることが第一条件。職種は問わない。
スマホで求人情報サイトの検索結果をスクロールしていく。
夏は山小屋、冬はスキー場に住み込むのもいいかもね。



────カレンダー

9/11/2024, 3:13:49 PM