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「神様だけが知っている」

暗い道を街灯が点々と照らしている。この辺はほとんどがマンションだ。家族用が多く俺のような単身者は少ない。二人で暮らす予定だった部屋に一人で帰る。

まだ荷物の整理も終わっていない。彼女が去ったという事実を突きつけられているようで怖い。

一緒に内見して二人ともすぐに気に入った。駅から近くて買い物も便利、少し都心から離れているだけで、それだって30分伸びるだけだ。

家族が増えることを予定して大きめのテーブルを買った。新しい暮らしを楽しみにしてたのは俺だけだったんだな。

一足先に自分の荷物を運び入れ彼女を待っている時だった。

「あの部屋には行かない」

嘘だ。君だって気に入ってたじゃないか、どうして今さら。

「違う。あの部屋は関係ない。もう別れることにしたから」

一方的に切られた電話。翌日彼女の部屋を訪れるとすでに引っ越した後だった。

何がいけなかったんだよ。ベランダに出てビールを流し込む。どう考えても理由がわからない。誰でもいいから教えてくれよ。

空を見上げる。月が出てきた。そこから何が見える?彼女はどこにいる?神さまならわかるのか?

7/5/2024, 1:02:51 AM