星乃威月

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             ラ
             咲
             く
             晴
             れ
             の
             日
             に

             追
             い
             風
 
             先
             ゆ
             く
             道
             は
             桜
             色
             に
             包
             ま
             れ




             |
             春
             爛    
             漫
             |




───────────
3月28日 0時37分 追記
───────────

卒業式を迎え
住み慣れた学生生活も、もう終わり
この春から新社員になる

着なれない白いブラウスに、黒のスーツ
踵の高いヒールを履いて
とうとう新社会人を迎えた

仕事が順調に進む中
社会人の仲間となった今でも
学生の頃の呆気なさは、まだ抜けない



毎日毎日、懸命に働いて
かれこれ、もう5年目

順調に成果を出せるようになり
今では任される仕事も増えてきた
社内でいい人とも巡り会えた

人生、薔薇色~!
とまでは行かないが
仕事も恋も順調に進みすぎて
景色を眺める余裕もないくらい
忙しい日々を過ごしていた


そんな最中での春
まだ3月と寒空が続く中
桜が咲き出した

チラホラと見える桜の木々
早い場所では
桜が満開に咲いている所も見えた

「綺麗~ もう春なんだね~
忙しさで、見てる余裕もなかったよ」

久々に上を向いて歩く晴れた通勤路
鳥の囀ずりも、何だか懐かしい


「よ!また一緒に行こうか?」

待ち合わせていた彼氏
付き合い始めたとはいえ、まだまだ駆け出し
恥ずかしさのあまり、まだ手を繋いだこともない

「ここ、穴場なんだ 寄ってかないか?」

彼氏のいうがままに、ある通りにたどり着く
目の前に広がる光景
そこには、見渡す限りの桜並木が満開に咲いていた

「すごい!どうやって見つけたの?」
「ふふーん!秘密だよ~」

鼻では笑っていたが
彼は仕事終わりに一人で出掛けては
早咲きの桜並木を毎日のように探し回っていたのだ


そんなことはつい知らず
突然の突風が二人の背を押した

「「わっ!!」」

倒れそうになりながら堪えた先には
間近に迫る二人の顔

「ご、ごめんなさい!
倒れるかと思って、良かった……」

心配する私をよそに
彼は目を見開いて前を指差した

「それより、見て!桜が、スゴいことに……」
「え……っ」

彼の指差す先には、見渡す限りの桜吹雪が──
空も、街路樹も、道も、全てが
桜一色に染まっていく
それはそれは
とても幻想的な光景が繰り広げられていた


何年ぶりに見ただろう
桜の花びらが落ちて行く間
私は、我を失い欠けて
ボーッと蜃気楼を見ていた

「仕事に追われ、早5年
仕事を任されることは増えてきたけど
まだ幼さの残るあどけなさ
私、このままのでいいのだろうか──」


我に返った私は、桜の花言葉を思い出した
[純潔・優美な女性・精神の美・あなたに微笑む]
そのどれもが優雅な女性像──
今のままでは、彼氏には不釣り合い……

もう立派な大人
立派な大人には、それなりの見振りを!

「雅也……」
「な、何だよ 思い詰めたように
急に名前なんかで呼んで……」
「私、今日から優雅な女性を目指す!
ううん、今から優雅な女性になる!
だから……ね」

と、彼氏にそっと微笑んだ

「今日は、本当にありがとう
とても嬉しいよ
来年も、その先の来年も、ずっと……
またここで一緒に見ようね」
「七海……」

見つめ合い、そっと手に手を取り合う二人
会社へと続く通勤路を歩む先には
しばらく桜吹雪で出来たピンクの絨毯が広がっていた


いつまでも末長く続きますように……

3/27/2025, 3:37:31 PM