明けゆく空の境界をなぞる鳥を眺めながら
自室のベランダで煙草に火をつける。
上手く寝付けなかったからか、妙に感傷的な気分になって
まだライターのつけ方も覚束なかったあの頃を思い出す。
「へったくそだなぁ。貸してみ?」
そう笑って私からひったくったライターに
慣れた手つきで火を灯し己の煙草に火をつけてから
「ん」
とあんたはそのまま顔を近づけてくるもんだから
私はついドギマギとしてしまって。
その時吸った煙草の味なんてとてもしやしなかった。
あれから私も老いて、この街で1人生きている。
あんたの教えてくれた煙草はきっと死ぬまで手放せないだろう。
テーマ『過ぎた日を想う』
10/6/2024, 2:08:34 PM