眠井

Open App

どうしても、掴むことができない。
羽根。いや、ちがう。わたぼうし。それともちがう。
ちらちらと舞っている。きらきらとしたなにか。
手を伸ばす。

しかし、するり、と。
軽快な身のこなしで逃げていく。透明の衣をまとった踊り子のよう。
僕はどうしてもそれを掴みたいというわけではないんだけれども、しかしなんだかあきらめきれない、といった複雑な気持ちで、手を伸ばし続ける。
手を。

この手は僕のものなんだろうか。
うまく操れていない気がする。
いつまでたっても掴めない。その光を。
指の隙間から、抜け落ちていく。
さらさら、さらさら。
踊りをやめて、今度は砂のようになる。いずれにせよ、とらえることはできない。
つよく力をこめて握りつぶすことも怖くて、僕はおんなじことを、無為な戯れを繰り返す。

そのうち、なんだかとてもつかれてしまった。
ようやく訪れた「諦め」という感覚とともに、ふっと頭上にあたたかさを感じた。
どこからか、陽がさしてきたのかもしれない。

5/19/2025, 11:50:42 AM