吸血鬼は館の窓から外を眺めていました。
日曜の昼下がり。楽しそうな街。
「はぁ…」
思わずため息がもれます。
「私は太陽の下で活動できない。日が当たると灰になってしまうから。それに私は昔、人間たちに悪さをした。今さら外に出る資格なんてない。一生何もできないし、死んだあと天国に昇ることもできないだろう」
吸血鬼は肩を落とし、またため息をつきました。
その時です。
悲鳴が上がりました。
お婆さんが車にひかれそうになっていたのです。
考える間もなく、吸血鬼は窓から飛びました。
そして、お婆さんを押してあげると、そのまま消えてしまいました。
「……誰だかわからないけど、助けてくれてありがとう」
お婆さんがお礼を言うと、
〈私の方こそ、ありがとう〉
どこからともなく声が聞こえました。
お婆さんは不思議そうな顔で空を見上げながら、天に昇っていく灰を見つめました。
♯太陽の下で ♯童話
11/26/2022, 12:12:41 AM