はす

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sweet memories

美しい、天国の様な場所で、貴方に恋をした。貴方に初めて会った時、優しく会釈をした貴方が、途方もなく綺麗で、美しくて。

蝶が舞い、花は笑い、鳥が歌い、光は踊る。花があやなす白い光の中、一際赫く咲いた薔薇を摘んだ。遊星の降る楽園の中、二人、喋喋喃喃の睦言を交わす。君に射す光があまりに眩くて、まるで魔法にかかった様だ。夢見心地に目を開いた君の眼は、銀河を閉じ込めたかの様に煌めいている。
「私、海が見たいの」
「海は青くて深くて、綺麗だよ。君に見せてあげたい」
「なら、連れていって」
遠つ国を夢見る深窓に育つ少女の様に、君は遠くへ思いを馳せる。駄目だ、ここを出てはいけない。出ることは許されない。でも、と呟く僕に、君は彫刻の様な美しい笑みを浮かべた。
「僕らの罪は、どうなるの」
「貴方と一緒なら、それでも良いわ」
君の目見の中の美しい炎を見た。海を夢む君の、熱く燃える魔法の火。見惚れた僕は、君の手を取った。

二人、手を繋ぎ、楽園を抜け出す。怖くはなかった。君がいるから、それも良いかと。
「日が暮れてしまうね」
「気をつけて。この先は少し暗い」
手を握るのが、少し弱くなって、慌てて力を込めた。行く道の先に、門が見えてくる。
「行きましょう」
「もう、二度と戻れないよ」
「大丈夫」
舂く空の下、二人、門をくぐる。繋いだ手はまだ離れぬままで。その先は天国か、或いは…
僕はもう、解っていたはずなのに。


「堕天」


Nel mezzo del cammin di nostra vita mi ritrovai per una selva oscura, ché la diritta via era smarrita.

5/2/2025, 1:00:42 PM