白糸馨月

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お題『半袖』

 小学生の頃、袖から腕を出していたら毛深すぎて一時的にあだ名が『ゴリラ』になった。
 それが嫌で学生時代は毛の処理には気をつけてきた。

 今年も半袖を着ないといけない時期がやってきた。私は今や社会人でお金が出来たから全身脱毛に通っている。
 大学時代に出来た彼氏とは今も付き合って結婚を前提に同棲しているが『毛を処理するのに金かけるの? バカじゃん』って言ってくる。自分はTシャツの袖やズボンの裾から毛むくじゃらの手足を出している。こいつ曰く『男が気にしてたら気持ち悪くね?』だそうだ。こっちの努力を努力と思わず無駄と言ってくることがむかつく。

 だから私は今、いたずらを決行することにした。
 この男はなかなか起きない。だから私はカミソリを手にして、彼の手を取る。毛むくじゃらの腕にカミソリを進めて、手で払うと意外と白い素肌が現れる。床に落ちた毛はあとで責任を持って掃除機かけると心で呟く。
 しかし、自分の肌の上で行われていることに気づかず、目を覚まさないのがなんだかおかしい。
 起きた時の反応を楽しみにしながら、私は彼のTシャツから伸びる片腕の毛の処理を笑いをこらえながら続けた。

5/29/2024, 3:43:55 AM