「ねえ。もしも過去へと行けるならどこへ行きたい?」
そう彼に言われてギクリとしてしまう。
「過去に?」
「うん、ある?」
私は焦りを隠しつつ考えるふりをする。
でも私の答えは決まっているんだ。
「えっと、あの、私は今がいいです」
「そうなんだ?」
私は彼の手に自分の手を重ねて、そのまま額を乗せて顔を見られないようにした。
「あなたと一緒の今が、これからが大切だから」
しばらくすると彼の手が私の頭を撫でてくれる。優しく慈しみを感じる手が心地いい。
「俺も君と一緒の今が大事」
――
あのね。
私、本当は未来から過去(ここ)に来たの。
そんなことを言ったら、彼はどんな顔をするのかな。
おわり
四三四、もしも過去へと行けるなら
7/24/2025, 1:51:45 PM