今になれば周りからおしどり夫婦なんて呼ばれるけれど、昔は全然そうじゃなかった。
旦那は仕事人間。家に帰ってきて会社に行くまでの時間に5時間もなかった。
そんな中で私は必死に子供を2人育て社会に送り出した。
きっと幼いころの2人の子供は父親と遊んだ記憶はないはずだ。
そうして過ぎていった時間。
それは突然の出来事だった。旦那が定年退職で家にいるようになった。
すると旦那はポツリとこぼしたのだ。
「…悪かったな」
驚いて顔を上げるとこちらは見ないで顔をしかめ新聞を読んでいる旦那がいた。
しかし、ほのかに申し訳ないという空気を纏っていた。
わたしは思わず笑みが溢れた。
「ふふ…」
「なんだ」
眉を寄せたままこちらをチラリと見る旦那。
私は口を開いた。
「フフ…いえ、私は謝られるような事は何もされてませんよ。むしろこちらこそ家庭のためにありがとうございます」
旦那は照れたように新聞に目線を落とす。
しかし旦那はまたも口を開いた。
「一緒に、家庭菜園でもするか…。できた作物は近所の方にあげてみたいんだ」
旦那のその提案に私は一気に嬉しさが込み上げる。
なぜなら家庭菜園は昔からずっとしたかった事だから。
「い、いいんですか?」
旦那はフンッと鼻を鳴らして小さく「ああ」とこぼした。
それから周りの人に
「おしどり夫婦ねぇ〜」
と、言われるようになった。
きっと私同様、旦那も嬉しいはずだ。
ーーーーーー
夫婦
11/23/2024, 8:47:27 AM