ㅤあの頃みたいにベランダに出てみた。
ㅤ同じ星を探して、通話をしてたあの夜。ぼんやり思い出してたら、肌寒さにクシャミが出る。ぶえっきしん!ㅤという声が、しんとした夜の只中にこだました。
ㅤ明日はまた気温が十度上がるらしい。この春はちょっとおかしい。一気に夏みたいになったかと思うと、不意に雪が積もったり。こうも気温が乱高下すると、話題としてはとっくに飽き飽きしていたけど、体感はまた別らしい。十七度という暖かさを私は上手く思い出せないでいた。
ㅤ暖かさを一度知ってしまうと、少し寒さが戻っただけで、真冬の辛さを軽く越えてしまう気がする。
ㅤ知らなきゃ良かった。
ㅤ言葉にして呟いてみたら、未練たらしくてアホすぎて、余計落ち込んだ。
ㅤ何を言ってもどうしようもないのだ。私が何を言ったところで、君には全然まったく少しも関係のないことなのだから。真実はひとつなのかもしれないけど、事実ってやつはきっと、人の数だけある。ただそれだけ。
ㅤそれでも私にははじめてだったから。寒さが厳しい時期に知ったあの温もりを辿って、ずっと大事にしていたかった。ずっと繋がっていたかったなあ、君と。
『君と』
4/3/2025, 2:53:02 PM