とある恋人たちの日常。

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 子供の時はひとりで、誰かに頼れることはなく、誰かに手を差し伸べられることはなかった。
 人見知りや泣き虫であることが悪い方向に行ってしまって、より孤独になってしまった。
 
 自分に出来ることも少なくて、他人に手を伸ばすことも出来なくて。
 
 だから、子供の頃から家族を持つことが私の夢だった。
 人を、好きになりたい。
 ひとりでいたくない。
 
 ここでは私が一歩踏み出すことが難しくて、別の都市に行くことにした。
 
 辿り着いた都市で勇気を出したの。
 変わりたかったんだ。
 偶然から大切な人立ちに出会えた。
 そして私は今、ひとりで暮らしていない。
 私の隣には愛しい恋人が無防備な顔で眠っている。彼の手は私の手の上に重ねられていて離してくれそうにない。
 
 でも、これが嬉しくて満たされた気持ちが胸に広がる。
 
 それと――
 
 私はお腹をさする。
 昨日、新しい命が宿ったことを知ってふたりで喜んだ。
 
 もう、独りじゃないんだ。
 
 
 
おわり
 
 
 
四〇三、子供の頃の夢

6/23/2025, 1:42:55 PM