傾月

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『目が覚めると』
其処は真っ白な世界だった

前を向いても
左右に首を振っても
後ろを振り返っても
天を仰いでも
地に視線を落としても

何処までも
只々真っ白な世界
色があるのは自分だけ

次々と疑問が浮かぶ

                    此処は何処で
                     自分は誰で
                     今が何時で
              何故自分だけ色があるのか
               何故この世界は白いのか
              

頭の中はフル回転だが
不思議と焦りはない


その内に
ついに考えることに疲れてきて
真っ白な地に体をそっと横たえた
仰向けになり手を天へ向けて上げてみる

自分の手の色が無くなっていっていることに気付く
まるで周りの白さに溶け込もうとしているかのように

                何故色が無くなるのか
               自分が全て白くなったら
                  体はどうなるのか
                 意識はどうなるのか
               何故この世界は白いのか

                     白とは何か

四肢が白くなり
横たえた胴体も白くなり始めた
これ以上見ていても仕方ないと
瞼を閉じようとしたが
瞼はピクリとも動かなかった

この白い世界の一部になろうとしていることを肌で感じた

いよいよ最期の時が来たその時
何処からともなく声が聞こえた

"ようこそ"


―――真っ白と私と

                 #76【目が覚めると】

7/10/2024, 1:12:43 PM