今際の際で、終着駅を見た。
電車には、私の他には誰も乗っていなかった。
友人の顔を思い浮かべるが、泡となって消えた。
結局のところ、友人には世話になってばかりだったと思う。
彼らがいなければ、私は今ここに座っていないだろうから。
「⬛︎⬛︎では、十五分の停車です。換気のためにドアを開けさせていただきます。接続電車は⬛︎⬛︎行き、十二時十三分の出発になります」
今になって思えば、幸せな人生だったと思う。
病気がちな日が続いた、だが、それは永遠に続かなかった。
空を見上げる。
夕焼けがなかった。あの赤い空が見たかったのに、それは永遠に訪れなかった。
どこかで、終末のサイレンが鳴った。
世界の終わりとは、かくもあっけないものなのだろうか。
沢山の命が、空に上がっていくのを見た。
だが、誰もが苦しみから、解放された顔をしていた。
友よ、そちらは無事ですか。いまだ、忙しないですか。皆、無邪気な顔をしているのが、不思議でならないのです。
青い鳥の様に、幸せを見つけられればいいのですが。
そういえば、残してきた遺書に、友人のことを一言も書かなかったな、と思い出した。
どこまでも、不義理な男だったな。私は。
8/10/2023, 10:16:26 AM