青い青い
俺はずっと気付いていた。
お前の歩幅に合わせて歩くのが、
いつの日からか、
日常の一部になっていた、と。
風が吹くと、
お前は目を細める。
まるで風に微笑みかけるように。
その仕草を、何度も何度も、
この目に刻み込み、
青い空を見上げて、
疼く胸の痛みをやり過ごす。
手を伸ばせば、届く距離だった。
なのに、
何故か、いつも言葉は、
喉の奥で鈍く光っているだけで、
出てこなかった。
お前の声は、
春の陽のように、優しくて。
俺の声は、
影のように、淡かった。
そんな俺達には、
沈黙が、既に会話で、
言葉は、息を潜めていた。
触れたら、壊れそうなものほど、
美しいなんて、
誰が決めたんだろう。
目が合うたびに、
胸の奥が軋む。
それを笑って誤魔化すのは、
きっと、俺だけじゃないと、
信じたかった。
壊すのが怖かった。
笑い合えた日々も。
肩を並べて歩いた道も。
名前を呼ぶたびに感じた温度も。
青い青い、空の下で。
俺たちは、
余りに、青かったから。
その一歩が、
踏み出せなかった。
5/4/2025, 8:19:02 AM