私の名前は実愛。実愛って書いてみのり。
両親はこの名前を気に入っていた。私も気に入っていた。小学校高学年になるまでは。
「実愛ちゃんの漢字、なんか読みにくい」
「だよね。ひらがなにして書いてくれない?」
「みの……みのあちゃん?ああ、みのりちゃんか。ごめんね」
自分の名前を奇妙に思う人が増えてきて、嫌で恥ずかしくて私は名前を漢字で書く回数を減らしていった。
どうして私だけ変に思われるんだろう?その悩みはいくら考えても消えなかった。
「それ、キラキラネームってやつじゃない?」
中学生になってしばらくしたある日、友達の千代美がそう言った。
「きらきらねーむ?千代美、どういう意味?」
初めて聞く言葉に疑問符が浮かび上がる。千代美は少し説明を始めた。
「普通とは違った読み方をしたり、珍しい漢字の組み合わせをした名前のことって聞いたことあるの。実愛ちゃんの名前も多分そのキラキラネームの類なんだと思う」
「普通とは、違った……」
普通とは違う。そのせいで変に思われたり馬鹿にされた。胸が苦しい……
なんで親はこんな名前にしたんだろう。それならひらがなで『みのり』の方が良かった。千代美もそうだけど周りは普通なのに――
言葉が出ない。なんて返せばいいのか。
「私は実愛ちゃんの名前いいと思うよ」
「え?」
千代美が私の手を取る。彼女の方を向くと真剣な眼差しでこちらを見ていた。
「きっと、実愛ちゃんの名前もお父さんお母さんが心を込めて付けてくれたんだと思うよ。名前に『普通』なんてないよ。どんな名前でも、親が愛情持って付けれくれたたった一つの名前なんだから」
千代美の言葉が、少し心を軽くしてくれた気がした。
何を『変な名前』で悩んでいたんだろう。こんなの名前をつけてくれたお母さんやお父さんにも失礼だ。
ずっと嫌だった『実愛』という名前。今からでも、大切にしていけるかな。
「ありがとう。千代美」
「うん。実愛ちゃんは、自分の名前に自信を持てばいいんだよ」
「というか、実愛ちゃんの名前の由来って何から来てるの?」
「由来?」
自分の名前の由来、今まで気にしたことがなかった。
「実愛ちゃん知らないんだ。今度聞いてみたら?可愛い名前だし、きっといい意味だと思うよ」
「……そうだね。聞いてみよう」
私は家に帰ったら早速聞こうと思った。
本日のお題『私の名前』副題『キラキラネーム』
7/21/2024, 2:40:46 AM